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東京海上日動火災保険株式会社
東京海上日動〈前編〉気候変動で損保の役割増 社会課題解決へ養殖業保険を開発【SDGsに貢献する仕事】
2022年10月05日
SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする新企画「SDGsに貢献する仕事」の第3回は、損害保険国内No.1の東京海上日動です。損保はSDGsにどう関わるのでしょう。新しい事業にはリスクがつきものですから、再生可能エネルギーをはじめSDGs関連の新たなビジネスには保険が不可欠なのだそうです。「サステナビリティは経営理念そのもの」という同社で新たな保険に日々取り組んでいる社員のお話です。(編集長・木之本敬介)
(冒頭のSDGsアイコンは、東京海上日動がとくに重視するゴール)
【お話をうかがった社員のプロフィル】
●野中菜央(のなか・なお)さん(写真左)=海上業務部 貨物業務グループ 課長代理
2015年、一橋大学商学部経営学科卒、同年入社、福岡中央支店(地場企業マーケット担当)、総合営業第二部(総合商社担当)などを経て現職。総合職グローバルコース。
●西山みどり(にしやま・みどり)さん(写真右)=海上業務部 貨物業務グループ
2021年、津田塾大学学芸学部国際関係学科卒、同年入社。総合職エリアコース。
(冒頭のSDGsアイコンは、東京海上日動がとくに重視するゴール)
【お話をうかがった社員のプロフィル】
●野中菜央(のなか・なお)さん(写真左)=海上業務部 貨物業務グループ 課長代理
2015年、一橋大学商学部経営学科卒、同年入社、福岡中央支店(地場企業マーケット担当)、総合営業第二部(総合商社担当)などを経て現職。総合職グローバルコース。
●西山みどり(にしやま・みどり)さん(写真右)=海上業務部 貨物業務グループ
2021年、津田塾大学学芸学部国際関係学科卒、同年入社。総合職エリアコース。
社員一人ひとりの取り組みが社会課題解決につながる
■自己紹介
──自己紹介をお願いします。
野中さん 入社後、営業担当として福岡中央支店に配属となりました。損害保険は保険代理店を通じて保険の引き受けをするため、営業担当者は担当する代理店の経営や営業の支援が主な業務となります。2018年に異動した総合営業第二部は商社や物流業者を主なお客様とする部署で、主に貨物保険と呼ばれる、貿易の際に商品・製品に保険をかける業務を担当しました。2022年に海上業務部に異動し、今は「アンダーライティング」という保険を引き受ける際のリスク審査や、社会課題の解決に向けた商品開発を担当しています。
西山さん 初期配属が海上業務部貨物業務グループで、貨物保険のアンダーライティングを行っています。2年目から「再保険」にも携わり、当社が引き受けたリスクを分散する業務をしています。
──「グローバルコース」と「エリアコース」の違いは?
野中 グローバルコースもエリアコースもどちらも総合職なのですが、グローバルコースは国内外問わず転勤があるコースで、エリアコースは自宅から通勤可能な範囲で勤務し本人のキャリアビジョンに応じてキャリアアップを図るコースです。私は、ジョブローテーションを通じてより早いスピードで成長したいと思い総合職グローバルコースを志望しました。
西山 私は長く働き続けることを考え、自宅から通勤可能な配属が約束されている総合職エリアコースを志望しました。
■東京海上日動にとってのSDGs
──東京海上日動にとってSDGsとは?
西山 サステナブルな社会への移行に向けて努力することは、個人にとっても企業にとっても責務だと思います。当社は創業当時から安心と安全をお届けすることで、お客様や地域社会の「いざ」を支え、お守りすることをパーパスとしてきました。「いざ」はお客様が困ったときの“いざ”と挑戦するときの“いざ”です。
このパーパスは、どんな時代でも変わらない当社の存在意義です。サステナビリティは経営理念そのものであり、社員一人ひとりの取り組みが社会課題の解決につながると考えています。
──「社会課題解決のトップランナー」をうたっていますね。
野中 明治維新による開国で貿易が盛んになりましたが、当時の船は今ほど堅牢ではなく海象条件の読み、航海技術が発達していなかったので、沈没・座礁が大きな社会問題でした。当社はそこを保険でサポートしようと設立された会社です。世のため、人のために社会問題解決に取り組むことは当社のDNAです。現在では、当社の事業を推進するほど社会課題の解決につながり、当社自身も持続的に成長することを目指していて、それがSDGsゴールへの貢献にも必然的につながります。事業活動と社会課題解決を循環させながら、サステナブルな社会づくりに貢献し、「社会的価値」と「経済的価値(利益成長)」を同時に高め、100年後も必要とされる“Good Company”を目指しています。
──近年の変化はありますか。
野中 気候変動で自然災害が増えて、お客様や社会が抱えるリスクが大きくなっています。損害保険会社が果たすべき役割も大きくなっているので、保険金の支払いをスピーディーにするとともに、新たな保険商品の開発、防災や減災、お客様が事故に遭われたときの早期復旧、再発防止のサービスの提供にも力を入れています。日本では自然災害から逃れられないので、私たちが責任を持ってお客様をお守りし続けることが大事だと考えています。
──新たな保険商品の例を教えてください。
野中 気候変動対策は当社の重要課題の一つです。2021年度にGX室(グリーントランスフォーメーション室)を立ち上げ、洋上風力や太陽光、地熱発電といった再生可能エネルギーに関する保険やサービスを提供しています。たとえば、太陽光発電事業のM&A(合併・買収)契約に特化した表明保証保険を2021年度に日本で初めて発売しました。表明保証保険は、M&A契約に規定された表明保証条項(=売主が買主に財務や労務等に関する開示事項に虚偽がないことを保証する条項)の売主による違反があった場合、買主が被る経済的損失をカバーするための保険です。日本ではあまりなじみがありませんが、欧米では一般的で、M&Aの絶対要件ともいえます。お客様が安心して太陽光発電事業に新規参入できるようお守りします。
──ほかにもありますか。
野中 PPA(Power Purchase Agreement=電力販売契約)という太陽光で発電した電力を販売する契約形態があり、そのPPA事業者向け専門のパッケージ保険を開発しました。たとえば、工場の屋根に太陽光パネルを設置して初期投資を抑えて発電事業に参画するビジネスモデルです。このような新しいビジネスモデルに合わせた保険を、グループ会社や商品部門と一緒につくっています。
「洋上風力パッケージ保険」もあります。洋上風力は海底ケーブルを敷いて、遠く離れた海で基礎を打って発電機を立てて稼働させるのですが、建設中から建設後、操業中のリスクまでシームレスに一つの保険で対応します。こちらは私たちの海上業務部が担当しています。
──自己紹介をお願いします。
野中さん 入社後、営業担当として福岡中央支店に配属となりました。損害保険は保険代理店を通じて保険の引き受けをするため、営業担当者は担当する代理店の経営や営業の支援が主な業務となります。2018年に異動した総合営業第二部は商社や物流業者を主なお客様とする部署で、主に貨物保険と呼ばれる、貿易の際に商品・製品に保険をかける業務を担当しました。2022年に海上業務部に異動し、今は「アンダーライティング」という保険を引き受ける際のリスク審査や、社会課題の解決に向けた商品開発を担当しています。
西山さん 初期配属が海上業務部貨物業務グループで、貨物保険のアンダーライティングを行っています。2年目から「再保険」にも携わり、当社が引き受けたリスクを分散する業務をしています。
──「グローバルコース」と「エリアコース」の違いは?
野中 グローバルコースもエリアコースもどちらも総合職なのですが、グローバルコースは国内外問わず転勤があるコースで、エリアコースは自宅から通勤可能な範囲で勤務し本人のキャリアビジョンに応じてキャリアアップを図るコースです。私は、ジョブローテーションを通じてより早いスピードで成長したいと思い総合職グローバルコースを志望しました。
西山 私は長く働き続けることを考え、自宅から通勤可能な配属が約束されている総合職エリアコースを志望しました。
■東京海上日動にとってのSDGs
──東京海上日動にとってSDGsとは?
西山 サステナブルな社会への移行に向けて努力することは、個人にとっても企業にとっても責務だと思います。当社は創業当時から安心と安全をお届けすることで、お客様や地域社会の「いざ」を支え、お守りすることをパーパスとしてきました。「いざ」はお客様が困ったときの“いざ”と挑戦するときの“いざ”です。
このパーパスは、どんな時代でも変わらない当社の存在意義です。サステナビリティは経営理念そのものであり、社員一人ひとりの取り組みが社会課題の解決につながると考えています。
──「社会課題解決のトップランナー」をうたっていますね。
野中 明治維新による開国で貿易が盛んになりましたが、当時の船は今ほど堅牢ではなく海象条件の読み、航海技術が発達していなかったので、沈没・座礁が大きな社会問題でした。当社はそこを保険でサポートしようと設立された会社です。世のため、人のために社会問題解決に取り組むことは当社のDNAです。現在では、当社の事業を推進するほど社会課題の解決につながり、当社自身も持続的に成長することを目指していて、それがSDGsゴールへの貢献にも必然的につながります。事業活動と社会課題解決を循環させながら、サステナブルな社会づくりに貢献し、「社会的価値」と「経済的価値(利益成長)」を同時に高め、100年後も必要とされる“Good Company”を目指しています。
──近年の変化はありますか。
野中 気候変動で自然災害が増えて、お客様や社会が抱えるリスクが大きくなっています。損害保険会社が果たすべき役割も大きくなっているので、保険金の支払いをスピーディーにするとともに、新たな保険商品の開発、防災や減災、お客様が事故に遭われたときの早期復旧、再発防止のサービスの提供にも力を入れています。日本では自然災害から逃れられないので、私たちが責任を持ってお客様をお守りし続けることが大事だと考えています。
──新たな保険商品の例を教えてください。
野中 気候変動対策は当社の重要課題の一つです。2021年度にGX室(グリーントランスフォーメーション室)を立ち上げ、洋上風力や太陽光、地熱発電といった再生可能エネルギーに関する保険やサービスを提供しています。たとえば、太陽光発電事業のM&A(合併・買収)契約に特化した表明保証保険を2021年度に日本で初めて発売しました。表明保証保険は、M&A契約に規定された表明保証条項(=売主が買主に財務や労務等に関する開示事項に虚偽がないことを保証する条項)の売主による違反があった場合、買主が被る経済的損失をカバーするための保険です。日本ではあまりなじみがありませんが、欧米では一般的で、M&Aの絶対要件ともいえます。お客様が安心して太陽光発電事業に新規参入できるようお守りします。
──ほかにもありますか。
野中 PPA(Power Purchase Agreement=電力販売契約)という太陽光で発電した電力を販売する契約形態があり、そのPPA事業者向け専門のパッケージ保険を開発しました。たとえば、工場の屋根に太陽光パネルを設置して初期投資を抑えて発電事業に参画するビジネスモデルです。このような新しいビジネスモデルに合わせた保険を、グループ会社や商品部門と一緒につくっています。
「洋上風力パッケージ保険」もあります。洋上風力は海底ケーブルを敷いて、遠く離れた海で基礎を打って発電機を立てて稼働させるのですが、建設中から建設後、操業中のリスクまでシームレスに一つの保険で対応します。こちらは私たちの海上業務部が担当しています。
海洋データ活用で養殖保険を当たり前に
■アンダーライティング
──「アンダーライティング」は損保業界の用語ですか。
野中 保険はロンドンのロイズマーケットが起源で、「リスクを引き受けます」と書類の一番下(under)にサインをする(writing)行為をアンダーライティング(underwriting)と呼んでいます。
西山 今は保険を引き受けるために情報を集め、リスクの審査、判断をするという意味でも使っています。
野中 生命保険の場合は個々のリスクより統計がベースですが、損害保険はさまざまなモノが対象なのでリスク審査も個別で全く違います。とくに貨物保険はどんなモノをどう運ぶかでリスクが大きく異なるので、細かくヒアリングします。
──西山さんはどんな貨物を担当しているのですか。
西山 主に養殖中の魚と、輸送中の自動車を担当しています。
──養殖魚と自動車では大違いですね。
西山 どの分野も情報を集め、精査し、リスクを見定めるというアンダーライティングの基礎は同じです。さまざまな分野を見ることでニッチな専門性を身につけつつ、リスクの見極め方をしっかり勉強できると思っています。
■養殖保険
──養殖魚の保険は輸送のリスクを補償するのですね。
野中 養殖をしている間のリスクも含めてお引き受けするパッケージ保険です。実は、養殖は保険の引き受けがすごく難しいビジネスです。養殖の魚が死んだ場合、いろんな原因が考えられます。エサが多すぎたのか、少なすぎたのか、一つのいけすに魚を入れすぎたのか、台風が来たからか、水質が変化したからか……。原因の特定が難しい。さらに温暖化の影響で自然災害が増えたり、今まで起きなかった場所で赤潮が発生したり、リスクが変化しています。未知のリスクを分析・予測して持続可能な保険を設計するのは難しいことなんです。
一方で2018年の漁業法改正で、養殖業への新規参入拡大や、新たな手法・漁場での生産拡大が目指されることになりました。2020年の「養殖業成長産業化総合戦略」では2030年に今の10倍規模の2200億円の輸出を目指す方針が示されるなど、養殖業を成長産業にすることが国の重要な戦略となっています。私が前に担当していた商社でも養殖事業への参画・投資の話が出ていました。お客様や当社にとって追い風の状況です。
──追い風なのに保険がなかったと。
野中 世界的にも同じで、養殖リスクの保険引き受けは一般的ではありません。一説では保険がかけられている割合は15%もないそうです。日本には公的な養殖共済「ぎょさい」がありますが、大規模な養殖や最近増えている陸上養殖を行うお客様が加入できないケースもあります。リスクが低いからお客様側で保険に加入しないのではなく、リスクが高くて保険会社が保険を提供できず、養殖事業者が大きなリスクを背負って事業に挑戦している状態だと分かりました。
今までなら保険の設計が難しい場合はお断りせざるを得なかったのですが、今回は「どうやったら保険をお引き受けできるか?」を考えました。一つの解は、新たな技術開発で組織の枠組みを越えて広く知識・技術を結集する「オープンイノベーション」です。養殖で社会課題解決にチャレンジしているウミトロンというベンチャー企業と話す中で、ウミトロンが持つ海洋データと、当社のアンダーライティングのノウハウにシナジーが見いだせることが分かり業務提携に至りました。提携のねらいは、海洋データを活用して養殖保険を当たり前のものにすることです。
──ウミトロンは何をしている会社ですか。
野中 海の持続可能な開発と魚の安全・安定供給を目指している企業です。IoT機器や衛星データを活用して、給餌の最適化や魚群行動の解析、海洋データ提供などのサービスをしています。養殖業は毎日エサやりがあり、魚の管理も大変で過酷な労働環境でもあります。自動給餌器を使って毎日いけすの場所まで船を出さずに済むようにしたり、カメラを設置して魚の動きや異変、成長スピードを遠隔で見られるようにしたりしています。
──ウミトロンとのコラボで新たな保険ができたのですね。
野中 従来はお客様からの情報だけで行っていたリスク判断を、水位、水温、波の高さ、海中の酸素量、クロロフィル(葉緑素)の値など、ウミトロンが取得する海の状況に関するデータを見て、従来とは別の角度でアンダーライティングができるように検証を進めています。
また、既存の共済制度では対象外の陸上養殖のリスクについても、国内初の専用保険を開発しました。
(写真は、AI・IoT技術を使ったスマート給餌機「ウミトロンセル」を活用した真鯛の養殖場=ウミトロン提供)
──「アンダーライティング」は損保業界の用語ですか。
野中 保険はロンドンのロイズマーケットが起源で、「リスクを引き受けます」と書類の一番下(under)にサインをする(writing)行為をアンダーライティング(underwriting)と呼んでいます。
西山 今は保険を引き受けるために情報を集め、リスクの審査、判断をするという意味でも使っています。
野中 生命保険の場合は個々のリスクより統計がベースですが、損害保険はさまざまなモノが対象なのでリスク審査も個別で全く違います。とくに貨物保険はどんなモノをどう運ぶかでリスクが大きく異なるので、細かくヒアリングします。
──西山さんはどんな貨物を担当しているのですか。
西山 主に養殖中の魚と、輸送中の自動車を担当しています。
──養殖魚と自動車では大違いですね。
西山 どの分野も情報を集め、精査し、リスクを見定めるというアンダーライティングの基礎は同じです。さまざまな分野を見ることでニッチな専門性を身につけつつ、リスクの見極め方をしっかり勉強できると思っています。
■養殖保険
──養殖魚の保険は輸送のリスクを補償するのですね。
野中 養殖をしている間のリスクも含めてお引き受けするパッケージ保険です。実は、養殖は保険の引き受けがすごく難しいビジネスです。養殖の魚が死んだ場合、いろんな原因が考えられます。エサが多すぎたのか、少なすぎたのか、一つのいけすに魚を入れすぎたのか、台風が来たからか、水質が変化したからか……。原因の特定が難しい。さらに温暖化の影響で自然災害が増えたり、今まで起きなかった場所で赤潮が発生したり、リスクが変化しています。未知のリスクを分析・予測して持続可能な保険を設計するのは難しいことなんです。
一方で2018年の漁業法改正で、養殖業への新規参入拡大や、新たな手法・漁場での生産拡大が目指されることになりました。2020年の「養殖業成長産業化総合戦略」では2030年に今の10倍規模の2200億円の輸出を目指す方針が示されるなど、養殖業を成長産業にすることが国の重要な戦略となっています。私が前に担当していた商社でも養殖事業への参画・投資の話が出ていました。お客様や当社にとって追い風の状況です。
──追い風なのに保険がなかったと。
野中 世界的にも同じで、養殖リスクの保険引き受けは一般的ではありません。一説では保険がかけられている割合は15%もないそうです。日本には公的な養殖共済「ぎょさい」がありますが、大規模な養殖や最近増えている陸上養殖を行うお客様が加入できないケースもあります。リスクが低いからお客様側で保険に加入しないのではなく、リスクが高くて保険会社が保険を提供できず、養殖事業者が大きなリスクを背負って事業に挑戦している状態だと分かりました。
今までなら保険の設計が難しい場合はお断りせざるを得なかったのですが、今回は「どうやったら保険をお引き受けできるか?」を考えました。一つの解は、新たな技術開発で組織の枠組みを越えて広く知識・技術を結集する「オープンイノベーション」です。養殖で社会課題解決にチャレンジしているウミトロンというベンチャー企業と話す中で、ウミトロンが持つ海洋データと、当社のアンダーライティングのノウハウにシナジーが見いだせることが分かり業務提携に至りました。提携のねらいは、海洋データを活用して養殖保険を当たり前のものにすることです。
──ウミトロンは何をしている会社ですか。
野中 海の持続可能な開発と魚の安全・安定供給を目指している企業です。IoT機器や衛星データを活用して、給餌の最適化や魚群行動の解析、海洋データ提供などのサービスをしています。養殖業は毎日エサやりがあり、魚の管理も大変で過酷な労働環境でもあります。自動給餌器を使って毎日いけすの場所まで船を出さずに済むようにしたり、カメラを設置して魚の動きや異変、成長スピードを遠隔で見られるようにしたりしています。
──ウミトロンとのコラボで新たな保険ができたのですね。
野中 従来はお客様からの情報だけで行っていたリスク判断を、水位、水温、波の高さ、海中の酸素量、クロロフィル(葉緑素)の値など、ウミトロンが取得する海の状況に関するデータを見て、従来とは別の角度でアンダーライティングができるように検証を進めています。
また、既存の共済制度では対象外の陸上養殖のリスクについても、国内初の専用保険を開発しました。
(写真は、AI・IoT技術を使ったスマート給餌機「ウミトロンセル」を活用した真鯛の養殖場=ウミトロン提供)
「食糧危機」「海の持続可能性維持」に貢献、社内表彰で最優秀賞
■SDGsに貢献
──養殖を支えることはSDGsに直結しますね。
西山 保険の提供によって安定的に養殖ができるようになれば、海の資源の保護につながります。SDGsの開発目標「14海の豊かさを守ろう」です。人口増加で世界的にプロテイン需要が拡大する中で、家畜は単位面積当たりの生産量が限られてしまうため、魚が家畜の代替品として注目されています。漁船での漁獲量が減る一方、年間を通して安定供給できて海の持続可能性の維持にもつながる養殖業は急拡大しています。資源不足を回避できる点では、「1貧困をなくそう」「2飢餓をゼロに」にもつながり、持続的な養殖業の成長を推進しうる点では、「8働きがいも経済成長も」にも貢献できていると感じます。
──さらなる展開も?
西山 保険会社が提供する価値は時代とともに変わってきています。伝統的な提供価値は「経済補償(損失を補填)」でしたが、今は損害を未然に防止するリスクマネジメントや損害防止サービスも含まれています。養殖リスクも、経済補償だけでなく、ウミトロンのようなパートナーとの連携で「事前アラート」などの損害防止サービスも展開できるかもしれません。
──養殖保険はサステナビリティ表彰・最優秀賞を受賞したそうですね。
西山 サステナビリティ表彰は東京海上グループ全体の表彰制度です。「Tokio Marine Group Good Company Awards」の中の1カテゴリーで、事業活動を通じて社会課題解決に貢献した取り組みが表彰されます。
「食糧危機」「海洋の持続可能性維持」といった社会課題の解決に貢献しながら、新たな保険マーケットを創出して当社の持続的成長にもつながるという「サステナビリティ戦略」を具現化したとして、2021年度の最優秀賞に選ばれました。
──反響は?
西山 養殖保険のプレスリリース後、数十社から問い合わせがあり、営業部門を通じてお客様と対話を始めています。生産者だけでなく、陸上養殖事業者向けのソリューションプロバイダーからの声がけもあって、水質管理、エンジニアリング、データ管理など、どんな技術があって、養殖には何が必要なのか、日々勉強しています。
──やりがいや貢献度は?
西山 養殖リスクについてはもともと専門だったわけではないので、本や雑誌、論文などで勉強しています。養殖リスクの保険引き受けは当社にとっても挑戦なので養殖に知見がある人が社内に少なく、若手でも勉強したことを日々の業務やウミトロンとの共同開発にも応用することができ、すごくやりがいを感じています。
(後編に続く)
(写真・山本倫子)
──養殖を支えることはSDGsに直結しますね。
西山 保険の提供によって安定的に養殖ができるようになれば、海の資源の保護につながります。SDGsの開発目標「14海の豊かさを守ろう」です。人口増加で世界的にプロテイン需要が拡大する中で、家畜は単位面積当たりの生産量が限られてしまうため、魚が家畜の代替品として注目されています。漁船での漁獲量が減る一方、年間を通して安定供給できて海の持続可能性の維持にもつながる養殖業は急拡大しています。資源不足を回避できる点では、「1貧困をなくそう」「2飢餓をゼロに」にもつながり、持続的な養殖業の成長を推進しうる点では、「8働きがいも経済成長も」にも貢献できていると感じます。
──さらなる展開も?
西山 保険会社が提供する価値は時代とともに変わってきています。伝統的な提供価値は「経済補償(損失を補填)」でしたが、今は損害を未然に防止するリスクマネジメントや損害防止サービスも含まれています。養殖リスクも、経済補償だけでなく、ウミトロンのようなパートナーとの連携で「事前アラート」などの損害防止サービスも展開できるかもしれません。
──養殖保険はサステナビリティ表彰・最優秀賞を受賞したそうですね。
西山 サステナビリティ表彰は東京海上グループ全体の表彰制度です。「Tokio Marine Group Good Company Awards」の中の1カテゴリーで、事業活動を通じて社会課題解決に貢献した取り組みが表彰されます。
「食糧危機」「海洋の持続可能性維持」といった社会課題の解決に貢献しながら、新たな保険マーケットを創出して当社の持続的成長にもつながるという「サステナビリティ戦略」を具現化したとして、2021年度の最優秀賞に選ばれました。
──反響は?
西山 養殖保険のプレスリリース後、数十社から問い合わせがあり、営業部門を通じてお客様と対話を始めています。生産者だけでなく、陸上養殖事業者向けのソリューションプロバイダーからの声がけもあって、水質管理、エンジニアリング、データ管理など、どんな技術があって、養殖には何が必要なのか、日々勉強しています。
──やりがいや貢献度は?
西山 養殖リスクについてはもともと専門だったわけではないので、本や雑誌、論文などで勉強しています。養殖リスクの保険引き受けは当社にとっても挑戦なので養殖に知見がある人が社内に少なく、若手でも勉強したことを日々の業務やウミトロンとの共同開発にも応用することができ、すごくやりがいを感じています。
(後編に続く)
(写真・山本倫子)
SDGsでメッセージ!
当社の経営理念がSDGsに通じますし、今後もお客様と一緒にSDGsの目標達成に向けて取り組んでいく機会は増えると思います。当社には「挑戦」の風土があるので、挑戦する人が多いし、周りもそのような人たちをサポートする姿勢が強く、自分がやりたい思いを実現する環境が整っています。社会課題やSDGsの観点で当社を選んでくれる就活生がいれば、一緒に社会課題に取り組んでいきたいです。(西山さん)
SDGsにそもそも興味がある人も、そうでない人も含めて、自分の50年後や将来の家族、子どもたちが「どんな世界で暮らしていたいか」を想像することが大事で、まずはそこがスタートだと思います。社会課題や企業、個人の「こうありたい」を実現するために当社として何ができるか、ぜひみなさんと一緒に考えていきたいです。(野中さん)
東京海上日動火災保険株式会社
【損害保険】
日本初の保険会社として、創業以来保険引受を通じてお客様の“いざ”をお守りすることをパーパスに事業を展開しています。具体的には、リスクに応じた商品・サービスの提供、迅速な保険金支払いとサポートに加え、多様化するお客様のニーズに対し「事業戦略パートナー」として新規事業の戦略構築や社会課題の解決を支援しています。こうした取組により、“いつも”支えることができる存在になるよう、社会課題解決のトップランナーとして挑戦し続けます。
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※就活割に申し込むと、月額2000円(通常3800円)で朝日新聞デジタルが読めます。
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